はじめに
新型コロナワクチン接種後の副反応の「発熱」の解熱を目的として、冷えピタ、熱さまシートなどの冷却ジェルシートが、必需品として、急激に人気が出た時期がありました。2021年の春、夏頃と思います。ところで、この冷却ジェルシートはどれくらい、解熱に効果があるのでしょうか?調べてみました。
結論
以下が、結論となります。
おでこへの、冷えピタなどの、冷却ジェルシートの使用は、解熱にほとんど影響しない、太い血管の通っていない部分(おでこ)を冷やしているため、場所を間違って使用している上に、そもそも同シートの冷却能力が不十分であり、核心温を下げることに無理があり、解熱には効果がない。
但し、冷感による苦痛緩和の目的には一定の効果があると考えられます。
副反応対策の必需品のひとつらしい… 冷えピタ以外にも、いろいろ
新型コロナワクチン接種後の副反応で発熱することは、今や周知の事実となっており、これから接種しようという人は、あらかじめ、発熱などに対して、その準備を行なってから接種ののぞむという人が多いようです。
そのため、副反応対策の必需品として、スポーツドリンク、解熱鎮痛剤、ゼリー飲料などが注目されていますが、これに加えて、「冷却ジェルシート」も必需品の一つになっています。一時は、お客さんが薬局に殺到して、売り切れ状態になったことがありました。
冷却ジェルシートは、シート状にした吸水ジェルを体に貼り付けやすいようにカバーと固定のためのシールを組み合わせたもので、ゲル中の水分が蒸発することで患部の温度を長時間に渡って下げる効果があります。
以下に、一般によく知られた冷却シートの商品名をまとめました。
商品名 | メーカー |
---|---|
冷えピタ | ライオン |
熱さまシート | 小林製薬 |
デコデコクール | 久光製薬 |
アイスノン冷却シート | 白元アース |
お熱とろーね | 池田模範堂 |
よく知られているのは、「冷えピタ」や「熱さまシート」だと思います。上表の商品以外にも、メジャーでないメーカーから同じような商品が発売されています。
以前ですと、氷水と入れただけの氷嚢(ひょうのう)か、アイスノン(硬くて、冷たすぎる)が一般的でしたが、冷却シートは長時間使用できる上に、冷たすぎることもなく、結露水でぬれることもないし、貼り付けが楽だし、画期的な商品です。
冷えピタを貼っても、解熱はしない。苦痛を和らげる効果はあり。
さて、ワクチン接種後に副反応の発熱が起こるケースが多いのですが、その解熱に対して、これらの冷却シートはあまり、効果がないそうです。勝 博史 氏(*1)は以下のように述べています。
- 冷却ジェルシートを貼付しても,体温を下げる(解熱する)効果はない。
- 冷却ジェルシートに含有されている水分量から,高熱の体温が解熱するほどの気化熱が発生することは考えられない。
- (おでこではなく)腋窩(えきか。わきの下のこと)や鼠径部(そけいぶ。大腿部の付け根にある溝の内側部)の深部血管を外部から冷却するクーリングについて,その効果はなく,核心温は下がらないとの研究報告もある。
- 一般的に「解熱」は、「異常な高体温が正常の体温に低下する」という意味であり、冷却ジェルシートの「局所的に温度が2℃下がる」という効果を,異常な高体温が正常体温に改善する「解熱効果」と勘違いしている。→ 冷却ジェルシートを貼れば平熱に下がるとの誤解が生じている。
- (但し)解熱ではなく冷感による苦痛緩和の目的には効果がある。
(*1)日本医事新報、勝 博史 (東京都立小児総合医療センター看護担当科長/集中ケア認定看護師)
冷却ジェルシートは、中に含まれる水分の気化熱で、患部を冷却する仕組みです。ですが、長さ13cm、幅5cm程度の冷却ジェル1枚に含まれる程度の水分による気化熱では、体温(核心温)を数度下げるほどのものでは到底ないということなのです。
最後の4の苦痛緩和の効果については後述します。
おでこに貼っても効果少ない→脇などに貼る
冷却ジェルシートに限らず、氷嚢や濡らしたタオルは、おでこに貼る(置く)ものと我々は思い込んでいます。熱さまシートの商品の箱には、こどものおでこに熱さまシートを貼った絵が描いてありますし、冷却ジェルシートでなくとも、昔から、映画、テレビで、熱を下げるには、おでこを冷やすのが当然と思っています。
しかし、おでこには、太い血管が通っていませんので、どんなにおでこを冷やしたところで、解熱への効果はほとんど期待できないのです。もし、解熱をちゃんとさせたいということであれば、おでこではなく、太い血管のあるところに貼るのが正解です。ただし、前記のように、冷却ジェルシートでは能力的に解熱効果を期待できない、というのが実際のようです。
(参考)五本木クリニック、【熱中症対策?】冷えピタ・熱さまシートに冷却効果は本当にあるの?
解熱鎮痛剤を使えない局面や、苦痛緩和では効果ありそう
では、冷却ジェルシートは全く効果がないのでしょうか?
前述の勝 博史 氏が述べているように、冷却ジェルシートは、解熱効果は期待できないのですが、苦痛緩和には有効のようです。確かに、高熱のときにおでこを冷やすと気持ちいいのは経験があります。
前述の勝 博史 氏は、
冷却ジェルシートやクーリングにより「気持ちが良い」と感じることにより副交感神経が優位になり,苦痛の緩和につながる効果があると思います。つまり,冷却ジェルシートは体温を下げる目的ではなく,局所の冷却による苦痛緩和目的にて使用することが効果的であると考えます。
と述べていて、なるほどと思いました。
まとめ
私は、子供の頃、おでこを冷やした経験は1,2回はあるものの、それ以降、そんな状況になったことがなく、冷却ジェルシートは使ったことはないです。私も、「おでこを冷やせば、解熱できてるはず!」と思っていました。実は、解熱とは関係なく、気持ちいいだけだったんですね。それでも、確かに、辛い状況で、楽になるのは大切で、ワクチン接種後の発熱向けの必需品にはふさわしいように感じました。