はじめに/結論・要約
新型コロナウイルスのワクチン接種の副反応(発熱)について、男女での起こりやすさの違いについて記事にしています。
厚労省は、ワクチン副反応データを収集していて、誰でも見れるように報告書が公開されています。何回かの中間報告を繰り返して、その時々までの報告書が見ることが可能です。この報告書が、日本での公式の信頼できる報告書でしょう。
同内容をもとにした報道が、テレビ、新聞で行われているようですが、「女の方が男より副反応がひどく出る、起こりやすい」かのような旨の、「それ、ホンマか?」という記事があり、疑問に思っていました。例えばこれ。そして、SNSではこういった記事と自分の周りでの経験を織り交ぜて発信されていて、どれが本当のことなのだろう?と思っていました。
上述の厚労省の報告書は、かなり、わかりにくい内容になっていて、すんなりとは頭に入ってこないため、本記事では、このデータを、なるべくわかりやすくなるようにまとめ、「副反応(発熱)の起こりやすさについての男女比」について、改めて整理してみました。
本記事の結論・要約
本記事の結果 → 新型コロナウィルスワクチン接種後の副反応は男女でどちらが多いのか?は次のようになっています。以下が、最もまとめた内容になります。
厚労省の報告書によれば、ファイザーワクチンの2回目接種において、若干、女の方が、男よりも、やや副反応の発熱を起こしやすい傾向はあるのは確かだったが、男女間で騒ぎ立てるほどの大きい差はなかった。(→ 例えると、男も女も同じように副反応の発熱を起こすが、よく見てみたら、若干女の方が多いかなあ?という程度でしかない)
また、ファイザーの1回目接種、アストラゼネカの1回目接種では男女に差はなかった。モデルナワクチンについては、公式にデータが明らかになっていない。
が結論です。
以下が要約です。
- ファイザーワクチンの場合は、1回目接種では、男女に発熱の発生に差があるとは言えず、両者で同じレベルだった。2回目接種において、男よりも女の方が、やや副反応(発熱)が発生しやすい傾向がありそうだが、発生比率は、女/男=1.4程度であり、多少、女の方が多いという程度であった。
- モデルナワクチンの場合は、「調整オッズ比」(*1)の値から、女の方が副反応の発熱を起こしていることは分かるものの、報告書上にファイザーワクチンと同じ男女比を比較できるデータの提示がなく(理由は不明)、どの程度かが比較できなかった。
- アストラゼネカのワクチンの場合は、1回目接種では男女に発熱の発生に差はなかった。2回目接種のデータはまだ公開されていない。
(*1) 調整オッズ比については、報告書を参照ください。
口コミでは、男女どちらが副反応が出やすい、とされているのか?
ツイッター上で、「男女のどちらが副反応が起こりやすいか?ひどいか?」以下のそのいくつかを引用してみます。
女の方が副反応がひどい、と言ってるケース ↓
あぁ〜?ビビらせてごめんね? あくまで私の周りの人の話だけど、男の人より女の人の方が副反応率高かった!接種前後はよく食べて寝て体調万全にすれば、心配要らないと思うよ?♀️
— もい (@kimoi0502) October 23, 2021
こちらは、男の方が副反応がひどい、と言ってるケース ↓
いや、2人とも同じ病院で、ファイザーだよ?
— ?✨芝?✨ (@mioshiba) September 18, 2021
モデルナは若い人の副作用、強いらしいね??
コロナワクチン自体、男の人の方が副反応強めに出ると地域の噂レベルで聞いたけど、神のみぞ知る?
その多くは、自分の職場などの身の回りのワクチン接種を行なった人だけをみて、その副反応の程度を判断し、「女の方が副反応がひどかった」「男の方が…」と言っているようです。
厚労省発表のデータから、男女比を確認してみた!
下表に、各社ワクチン接種後の副反応の発熱発生者の男女比をまとめています。基データは、厚労省発表のものです。
項目 | ①ファイザー (コミナティ― 筋注) | ②モデルナ (COVID-19 ワクチン モデルナ筋注) | ③アストラゼネカ (バキスゼブリア 筋注) |
---|---|---|---|
出典 | 厚労省 新型コロナワクチン の接種後の 健康状況調査 ファイザー社の 新型コロナワクチン | 同 武田/モデルナ社の 新型コロナワクチン | 同 アストラゼネカ社の 新型コロナワクチン |
被接種者数 (1回目) | 19,806 人 | 13,220人 | 536 人 |
被接種者数 (2回目) | 19,657人 | 12,535 人 | データ公表なし |
発熱者の男女の割合 (1回目) (男/女) | 2.0 %/4.1 % | データ公表 なし | 49.6 %/51.3 % |
同調整オッズ比 (1回目) (女/男) | データ公表 なし | 1.695 | 1.202 |
発熱者の男女の割合 (2回目) (男/女) | 29.7 %/42.4 % | データ公表 なし | データ公表なし |
同調整オッズ比 (2回目) (女/男) | データ公表 なし | 1.741 | データ公表 なし |
備考 | ・ファイザー品で 発熱は、 男よりも女が 多い傾向が ありそう。 ・(参考) 基データの 被接種者の 男女比= 33.8% / 66.2% (1回目)、 33.9% / 66.1% (2回目) | ・モデルナ品 での発熱は、 男女どちらが 多いかは データ公表 されていない ので不明。 ・基データの 対象被接種者の 男女比= 95.5% / 4.5% となっていて、 極端に男性数が 多く、データ集めに 失敗してる。 | ・アストラゼネカ品 での発熱は、男女で 有意な差がなく、 ほぼ同じ。 但し、まだデータ数が 少ない。 ・(参考) 基データの 被接種者の 男女比= 59.1% / 40.9% (1回目) ・2回目接種の データはまだ、 公表されていない。 |
(注1)発熱者数の数字データ自体は公表されていないため、出典のグラフから数値を読み取った。
(注2)発熱者数の男女の割合の算出式が公表されていないが、次のように計算されていると考えた。→ 割合(%)=100×発熱者数(男)/総被接種者数(男)。女性も同様。
(注3)各ワクチンメーカーの報告書で、被接種者数が2種類書かれているが、上表では、最初に書かれている方を参照した。恐らくは、前者は当初確保した被接種者数で、後者は様々な理由で接種できなくなった人を差し引いた被接者数と推測。
(注4)発熱は37.5℃以上のデータで、38℃以上のデータを含んでいない。
(注5)①ファイザーでは、発熱者の男女の割合の調整オッズ比の記載がないが、②モデルナ、③アストラゼネカでは書かれている。また、②モデルナのみ、発熱者の男女の割合のデータの記載がない。
各ワクチンの概要を一言でまとめると下表のようになります。
ワクチン 会社 | 副反応の発熱発生に関する男女比の状況 |
---|---|
ファイザー | (接種1回目)女の方が男よりわずかに多いが、ほとんど、男女で差はない。(男 2.0 %、女 4.1 %であり、数値が低い上に、差も少ない) (接種2回目)女の方が男よりも、副反応の発熱がやや起こりやすい傾向があった。しかし、概算値にすると、男:約30%、女:約42%であり、言われているほど、女の方が副反応の発熱が起こりやすい、というデータにはなっていなかった。 → 女/男=2倍以上ならともかく、同 1.4倍程度でしかなく、女の方が少し発熱が起こりやすいというレベル。 テレビ、新聞では、「明らかに女の方が副反応(発熱)が起こりやすい」かの印象の内容が見かけられるが、この数値ではそこまでの違いはないと考えるのが常識。 |
モデルナ | データ公表されておらず、発熱の関する男女比は不明。 → 使用している基データで女のデータが極端に少なく、男女比の議論がしづらいので、こっそりとデータを出していないのでは?と考えている。今更、やり直しもできないし。 代わりに「調整オッズ比」なる値の記載があり、男よりも女の方が発熱しやすいことはわかるが、ファイザー品にはそのデータがなく比較ができない。 |
アストラゼネカ | (接種1回目)副反応の発熱に関して、男女で有意な差が見られず(→ 男/女=49.6 %/51.3 %)男女間で差はない。但し、まだ、データ収集中のようでデータが少ない。調整オッズ比の記載があるが、他社のデータが出ていないので比較できない。 (接種2回目)データの公表なし。 |
ファイザー → 2回目の時だけ女が多い。1回目は差はなし。
(接種1回目)女の方が男よりわずかに多いものの、ほとんど、男女で差はありませんでした。(男 2.0 %、女 4.1 %であり、数値が低い上に、差も少ない)
(接種2回目)概算値で、男:約30%、女:約42%であり、女の方が男よりも副反応の発熱がやや起こりやすい傾向があったものの、女/男= 1.4倍程度でしかなく、女の方が少し発熱が起こりやすいというレベルで、言われているほど、女の方が副反応の発熱が起こりやすい、というデータにはなっていませんでした。
モデルナ → 女が多そうだがデータなし。病院がデータ集めに失敗してる。
副反応の発熱について、男女比のデータは公表されていませんでした。先行発表のファイザーと同じデータを揃えるのが普通なのですが、新たに「調整オッズ比」値のデータが追加された違ったものになっていました。また、基データの被接種者の数はそこそこ十分な数(13000人余)てあったものの、極端に女が少ない男女構成(女は男の19分の1以下)になっていて、大きく偏っていました。このように基データで男女に極端な偏りがあったので、不都合なため、男女比のデータを公表しなかった可能性もあると考えています。
報告者(順天堂大学)データを出さないのはまずいと思ったのか、この報告書から、先に報告されたファイザー報告書にはない「調整オッズ比」の値を載せ、女の方が男より副反応(発熱)が起こりやすい旨の説明をしているようです。
アストラゼネカ → まだ調査中。1回目では男女で差はない。
アストラゼネカはまだ、接種開始からの時間が短く、十分なデータが取れていないようでした。現段階では、1回目接種の結果(途中の様子)しか公表されていませんが、男女で差はなし、という結果です。2回目接種の結果はまた公表されていません。
また、今回の結果からは、男女どちらかが「発熱がひどくなる」かどうかまでは、わかりませんでした。
まとめ
今回の記事では、ワクチン接種後の副反応の発熱について、その男女比についてまとめてみました。
テレビ、新聞、ネットでは、あたかも「ワクチン接種をすると、大抵は、男よりも、女の方に副反応が出る」であるかのような内容で報道されていて、これがさらに飛躍して「ワクチン接種で、女はひどい副反応(発熱)が出て大変だけど、男はほとんど副反応は出ないので楽」なんて思っている人も少なからずいるはずです。
ですが、上記の結果では「女の方が多少副反応が出やすいかもしれないけど、男も同じように副反応が出る」という内容になっていて、だいぶ報道とは違っているようでした。
しかも、これは、ファイザー品のみの結果であり、全接種数のざっくり4分の1を占めるモデルナ品については結果が公になっておらず、報道各社はファイザー品の結果だけを見て、「女の方が…」と報道しているわけで、ニュース報道も結構、いい加減なもんだな、と思いました。
また、モデルナのワクチンについては、男女比についてのデータが公表されていないのは残念です。第2回目の実験に期待します。
参考にしていただけますと幸いです。