はじめに
新型コロナウィルスの感染予防に対して、2回のワクチン接種を完了をして、これでもうワクチンを打たなくても大丈夫、というわけではありません。
ワクチンは、ずっと効果が継続するわけではなく、接種からの時間経過に伴い、その免疫の効果が減じられていくのです。インフルエンザ予防のワクチン接種を思い浮かべれば、1シーズンしか持たないことはとてもよく知られています。また、新型コロナウィルスの変異株が登場したとなれば、ワクチンの効果は例えば、半分とかになってしまうので、接種後の時間経過による減少も考慮すると、その効果の減少は大きなものなってしまうのです。
つまりこういうことです。
- 新型コロナウィルスワクチンは、ずっと効果が継続するわけではなく、接種からの時間経過で、その効果が減少する。
- 接種したワクチンと異なる変異株に対しても、ワクチン効果が減る。
ニュース報道等を拝見していると、なんとなく「日本国民の約7割に対してワクチン接種完了できたので、もう安心」のような誤ったイメージを抱かせているのが気になります。これは、「去年の秋~冬頃に、インフルエンザ予防接種を打ったので、一年たった今年の冬も安心」と言っているようなものです。そんなわけがありません。
本記事では、新型コロナウィルスワクチンの効果が、どれくらい継続するものなのかについて、厚労省発表の資料を参考に解説を試みます。
結論
厚労省が公表しているワクチン接種の効果(発症予防、持続期間)をまとめると、以下の内容であった。
・新型コロナウィルスワクチン接種の予防効果は、(インフルエンザワクチンのような他のワクチン同様)、効果が減少していくことがわかっている。
・【感染予防効果】ワクチンの感染予防効果は、2回目接種時から短期間のみ有効であって、時間経過による効果の低下傾向が避けられず、長期間に渡って効果は維持されない。ファイザー品では4,5ヵ月で効果が当初の50%を超えて低下、モデルナ品でも4-8ヵ月で80%に低下した(それ以降は不明)
・【発症、入院予防効果】ファイザーまたは、モデルナ社のワクチン接種により2回目接種から4-8ヵ月までの、発症および入院予防効果は期待できるが、それ以上の効果は現時点で不明である。
他のワクチンでの持続期間例 → インフルエンザワクチンの場合は?
ワクチンということで、すぐに思い浮かぶのが「インフルエンザワクチン」です。厚労省によれば、
「ワクチン接種による免疫の防御に有効なレベルの持続期間はおよそ5ヵ月」
と説明しています。(参考)インフルエンザの基礎知識(厚生労働省 平成19年12月)
下図は、ワクチン接種後の抗体価の上昇-減衰の様子をイメージで表したものです(参照元 ふみもとクリニック)
ワクチン接種で、抗体価が上昇しピークに達しますが、徐々に数値が減少していき、5ヵ月程度で予防効果が得られなくなる程度まで減少しています。
新型コロナウィルスワクチンもこれと同じような挙動をとるはずです。
ワクチン予防効果期間の、厚労省による見解
新型コロナウィルスワクチンが2回接種後、どれくらいの期間予防効果を維持するのかについて、厚労省が海外の文献を引用して説明しています。
(参考)日本で接種が進められている新型コロナワクチンにはどのような効果(発症予防、持続期間等)がありますか。(厚労省)
上記の厚労省サイトに説明があるのですが、文字だけでわかりにくいので、本記事ではグラフ化して理解しやすいように試みています。
予防効果というと、私などは「感染予防効果」しか思い浮かばなかったのですが、厚労省サイトでは以下の4つの予防効果について触れています。
- 感染予防効果
- 発症予防効果
- 入院予防効果
- 重症化・死亡に対する予防効果
各社ワクチンの予防効果まとめ
下表は、厚労省資料を基に、各社ワクチンの予防効果をまとめたものです。詳しい傾向は、次項以降をご参照ください。
項目 | ファイザー | モデルナ | アストラゼネカ |
---|---|---|---|
感染 予防効果 | × 50-20%(5ヵ月) 低下傾向 | ○ 80%(4-8ヵ月) 低下傾向 | データが 示されて いない |
発症 予防効果 | ○ 84%(4ヵ月-) 低下傾向 | ○ 92%(4ヵ月-) 維持傾向 | × 47%(20週以降) 低下傾向 |
入院 予防効果 | ○ 80-90%台(5ヵ月以降) 維持傾向 | ○ 90%台(4-8ヵ月) 維持傾向 | △ 77%(20週以降) 低下傾向 |
死亡に 対する 予防効果 | × 50%(7ヵ月以降) 低下傾向 | データが 示されて いない | △ 79%(20週以降) 低下傾向 |
(注)表のセル内の内容は次の通り。 ↓
上段:一定期間経過後の予防維持効果 ○良好、×悪化
中段:一定期間後の残留効果%
下段:各効果の増減傾向
上表を各ワクチンメーカー毎にまとめると、以下のようになります。
ワクチン メーカー | 予防効果の概要 |
---|---|
ファイザー | 発症、入院防止持続効果は期待できそうだが、感染、死亡に対する予防効果が長期維持されない。→ 接種から半年もすると、感染防止効果が大部分失われてしまう、という結果。 |
モデルナ | 感染防止持続効果は、低下傾向あるものの、減少幅少なめで良好。発症、入院予防効果も良好で長期間維持される可能性。 |
アストラ ゼネカ | 発症予防効果は期待できないという結果。入院、死亡に対する予防効果も長期維持できなさそうで、あまり、本ワクチンでは良いところが見当たらず。 |
上記データは、半年ぐらいまでのデータしかない場合がほとんどで、それ以上時間が経過した場合(1年以上とか)の結果が明らかではありません。インフルエンザワクチンでの経験を基に想像すると、そんな何年も効果が維持されるとは思えません。
さらにまとめると、以下のようになります。
・ワクチン接種で、ある程度の長期間の予防効果が期待できるのは、発症または、入院予防効果で、ファイザーかモデルナ品の場合に限られる。
・感染予防効果は、いずれのワクチンも、接種からの時間経過による効果の低下傾向があるので、早ければ半年程度で効果が失われる。モデルナ品では比較的長期間効果を維持しているもの低下傾向、ファイザー品ではその性能劣化の程度がかなり大きく、5ヵ月で半減する。
・アストラゼネカ品では、いずれの予防効果項目でも低下傾向が見られるので、長期間の効果が期待できない。発症予防効果については接種当初から低い効果しか得られていなかった。
感染予防効果
下図に、各社ワクチンの感染予防効果の、一定期間経過後の効果の維持の様子を示しました。青色のバーは2回目接種直後(あるいは直前)の効果、オレンジ色のバーは一定時間経過後の効果を表しています。
(注)厚労省資料を基に独自に作成した。グループの異なるデータ間の比較は、試験条件が異なるので、単純に比較できないが、較べられるように併記した。
感染予防効果の結果は以下の通りでした。
≪各社ワクチンの感染予防効果≫
【ファイザーワクチン】 2回目接種から、4,5ヵ月ほど経過すると、感染予防効果は半減、6,7ヵ月程度の経過では2割ぐらいまで減少した。
【モデルナ】 2回目接種から4-8ヵ月ほどの経過でも、感染予防効果は80%程度の比較的高い状態が維持されていた。
【アストラゼネカ】 厚労省資料にはデータの掲載がありませんでした。
↓
<感染予防効果のまとめ>
時間経過とともに感染予防効果は減少する傾向があり、ワクチンメーカーでその程度が異なっていた。2回目接種から半年ほど経過で、モデルナ品では8割ほどの効果を維持していた一方で、ファイザー品では効果が半減していた。アストラゼネカ品についてはデータ掲載なく不明。
発症予防効果
下図に、各社ワクチンの感染予防効果の、一定期間経過後の効果の維持の様子を示しました。
(注)厚労省資料を基に独自に作成した。グループの異なるデータ間の比較は、試験条件が異なるので、単純に比較できないが、較べられるように併記した。
発症予防効果の結果は以下の通りでした。
≪各社ワクチンの発症予防効果≫
【ファイザーワクチン】 発症予防効果は減少傾向にあったが、4ヵ月経過で83%を維持していた。
【モデルナ】 4ヵ月経過後に92%と、発症予防同効果を維持していた。
【アストラゼネカ】 もともと発症予防効果が低い(63%)上に、2回接種から20週経過で47%まで同効果は低下した。
↓
<発症予防効果のまとめ>
ワクチンメーカーによって、2回目接種後からの時間経過に伴って、発症予防効果が維持できているものと、低下するものがあった。ファイザー品、モデルナ品では4ヵ月経過しても同効果を維持していたが、アストラゼネカ品では接種直後での同効果がそもそも低く(63%)、20週(約5ヵ月)経過で47%に低下した。
入院予防効果
下図に、各社ワクチンの入院予防効果の、一定期間経過後の効果の維持の様子を示しました。
(注)厚労省資料を基に独自に作成した。グループの異なるデータ間の比較は、試験条件が異なるので、単純に比較できないが、較べられるように併記した。
入院予防効果の結果は以下の通りでした。
≪各社ワクチンの入院予防効果≫
【ファイザーワクチン】 5ヵ月経過後も、入院予防効果は80-90%台と、効果を維持していた。
【モデルナ】 5ヵ月経過後も、入院予防効果は90%台であり、効果を維持していた。
【アストラゼネカ】 時間経過とともに比較的入院予防効果を維持しているものの、低下傾向を示した。2回接種から20週経過で77%まで同効果は低下した。
↓
<入院予防効果のまとめ>
ファイザー品、モデルナ品では5ヵ月以上経過後も、同効果を高水準で維持できていた。その一方で、アストラゼネカ品は同77%と比較的効果を維持していたものの、低下傾向にあった。
死亡に対する予防効果
下図に、各社ワクチンの死亡予防効果の、一定期間経過後の効果の維持の様子を示しました。
(注)厚労省資料を基に独自に作成した。グループの異なるデータ間の比較は、試験条件が異なるので、単純に比較できないが、較べられるように併記した。
死亡に対する予防効果の結果は以下の通りでした。
≪各社ワクチンの死亡に対する予防効果≫
【ファイザーワクチン】 6ヵ月までは効果を維持するも、7ヵ月を経過すると効果は半減した。
【モデルナ】 厚労省資料にはデータの掲載がありませんでした。
【アストラゼネカ】 比較的、重症化・死亡に対する予防効果を維持しているものの、時間経過とともに低下する傾向を示した。2回接種から20週経過で79%まで同効果は低下した。
↓
<入院発症予防効果のまとめ>
ファイザー品、アストラゼネカ品では時間経過とともに死亡に対する効果が低下した。モデルナ品についてはデータ掲載なく不明。
まとめ
私などは、連日のニューズ報道に洗脳されて、てっきり「自身の感染防止のためにワクチン接種が必要」と思っていましたが、厚労省の前述のサイトの内容は「重症化を防ぐためにワクチン接種をしてください」という内容にすり替わっていて、微妙なずれがあるのが興味深いです。
さて、私の中では、「ファイザーワクチン最強!」のようなイメージがあったのですが、上記の内容を見てみるとその感染防止効果は短期間しかないことがわかって意外でした。ファイザーワクチン2回目接種から5ヶ月以上経過する人も、今後ボチボチと出てきますので、3回目接種(ブースター接種)の処置をしない限りは、未接種者と同じ感染しやすさということになる理屈になりますね。
感染防止効果がこれだけ短期間しかないということなら、2回目接種者であっても、その感染防止効力を失えば、やがて、自分が感染、他にうつしてしまう可能性もあるわけで、検討されていた「ワクチン接種証明」など、ごく短期間でしか有効でないので、なんの意味も持たないというのがわかります。
最近では、3回目接種(ブースター接種)が開始されているようですが、「あの副反応のひどいワクチン接種をもう一回!」という人はなかなかいないと思うので、3回目接種率は大幅に減ると、勝手に予想しています。