はじめに
日本では、新型コロナウイルスワクチンの接種率が7割にも達し、この「ワクチン接種の効果で、感染拡大が抑えられている」か、のストーリーを多くの人が信じさせられているように思います。
しかし、ワクチン接種後にも、起こらないはずのコロナ感染が起こる「ブレイクスルー感染」が多発していて、ニュースをよく見てみると実はたくさん報道されています。「ブレイクスルー感染」という言葉が用いられる背景には、「ワクチン接種をすれば新型コロナウイルスに感染しないはず」という意味合いがあるはずです。
本記事では、「ブレイクスルー感染」に関する報道を集め、その実態をまとめてみました。
ブレイクスルー感染に関する報道
現時点でのブレイクスルー感染に関する報道を下表に集めてみました。
報道 |
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「ブレイクスルー感染」でクラスター 介護施設の32人 福井(NHK 2021/9/23) 福井県は22日に41人が新型コロナウイルスに感染したと発表。このうち32人は介護施設の入所者や職員で、全員が2回のワクチン接種を終えていることから、福井県はいわゆる「ブレイクスルー感染」のクラスターが発生した。 |
病院でのクラスター 25人中24人が「ブレイクスルー感染」群馬(NHK 2021/9/22) クラスターが発生したのは伊勢崎市の原病院で、県によりますと20日から22日までに入院患者17人と職員8人の合わせて25人の感染が判明。25人は10代から80代の男女で、このうち1人はワクチンの接種が1回でしたが、残りの24人はワクチンを2回接種してから2週間以上がたっていた。 |
前三鷹市長の清原慶子さん、ブレークスルー感染を告白「ワクチン2回接種で安心しないで」(東京新聞 2021/9/2) 前三鷹市長の清原慶子さん(69)が、新型コロナウイルスに感染していたことを自身のブログで公表し、本紙の電話取材に応じた。2回目のワクチン接種から約40日経過した8月中旬に陽性が判明。 |
横浜で新たに6人ブレークスルー感染(カナロコ 2021/11/18) 新型コロナウイルス感染症を巡り、横浜市は18日、10歳未満~90代の男女16人の感染を新たに確認したと発表。1人が中等症で15人が軽症。うち9人の感染経路が不明。6人がワクチンの接種完了後に陽性となる「ブレークスルー感染」という。 |
ワクチン2回接種後に感染、死亡 都内で初確認、60代男性(共同通信 2021/8/12) 東京都は12日、新型コロナウイルスの感染者6人の死亡が新たに確認され、うち1人は2回のワクチン接種を済ませていた60代男性。ワクチン2回接種後に陽性となる「ブレークスルー感染」による死亡が都内で確認された例は初めて。 |
東京都で24人死亡、うち5人は「ブレークスルー感染」(福井新聞 2021/9/16) 東京都は9月16日、新型コロナウイルスの感染者が新たに831人報告されたと発表。うち重症者は16人減の182人。自宅療養中の40代を含む24人の死亡も確認。都によると、死亡した40代の男性は8月28日に陽性が判明。高血圧などのため入院先が調整され、入院当日の今月1日夜に容体が急変して亡くなった。別の5人はワクチンを2回接種後に陽性となる「ブレークスルー感染」で亡くなった。 |
2回接種後にコロナ陽性 沖縄で85人 「ブレークスルー感染」の割合は2%(沖縄タイムス 2021/8/24) 沖縄県内で8~14日の1週間に新型コロナウイルスの陽性判定を受けた4179人のうち、85人が2回のワクチン接種を済ませていた。陽性者全体に占める割合は2・03%。 |
「ブレークスルー感染」 病院クラスター10人中7人が該当 症状軽く、福井県「ワクチンの効果」(福井新聞 2021/9/9) 福井県越前町の病院関連で9月7日、新たに8人の新型コロナウイルス感染が分かり、県はクラスター(感染者集団)が発生したとの認識。同日までに確認された感染者10人のうち、7人はワクチン接種完了後に陽性となる「ブレークスルー感染」。一方、7人はいずれも無症状または軽症にとどまっており、福井県は「重症化を防ぐワクチンの効果が表れている」。 |
上表をまとめると以下のようになります。
- ブレイクスルー感染が全国で多発しており、中には接種済者のほとんどが感染するというクラスター状態になっていて、ワクチンの感染予防効果がほとんどないという状況を示唆している。
- 上記報道は、ワクチン接種から日にちが経っているのでワクチンの効果が落ちているというような話ではなくて、報道日から判断して、ほとんどがワクチン接種が感染予防効果が維持できるはずの期間内の接種後から半年以内での感染であり、そもそも、最初からワクチン接種による感染予防効果が低いことを如実に表している。
ブレイクスルー感染率は?
下表は、ブレイクスルー感染の状況を数字で表した、ブレイクスルー感染率に関する報道です。
報道例 |
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都内 “ブレイクスルー感染”の割合 高齢者で半数以上に(NHK 2021/12/10) 65歳以上…6月3.2%、7月20.7%、8月39.8%、9月48.9%、10月58.7%。12歳から64歳までの人…6月0.2%、7月1.1%、8月3.7%、9月9.2%、10月23.8%。都の専門家は「ブレイクスルー感染」の特徴について、接種していない人に比べ、発熱などの症状が現れにくい傾向。 |
新型コロナ 4か月間でブレイクスルー感染2.56% 神奈川(NHK 2021/11/10) 神奈川県は、新型コロナウイルスのワクチンを2回接種したあと2週間以上たって感染が確認された「ブレイクスルー感染」にあたる感染者が、ことし6月から9月までの4か月間に2717人いて、新規感染者全体の2.56%だったと明らかにした。 |
「ブレイクスルー感染」、群馬で全体の3割に…高齢者に抗体残りにくく(読売新聞 2021/11/9) 新型コロナウイルスワクチンの2回目接種から2週間後以降に感染してしまう「ブレイクスルー感染」が群馬県内では10月末までに少なくとも437人に上ることが、県感染症・がん疾病対策課のまとめでわかった。10月の全感染者に占める割合は3割に達し、県民に基本的な感染防止策の継続を求めるとともに、県は3回目の接種計画を検討していく。 |
コロナで入院の6%が「ブレークスルー感染」 仙台市、重症化なし(河北日報 2021/9/3) 仙台市は2日、新型コロナウイルスに感染し、8月末時点で入院中の市内患者148人のうち、6・1%に当たる9人がワクチン2回接種後、2週間が経過して陽性が判明した「ブレークスルー感染」と明らかにした。1回目の接種を終えた入院患者は12人いる。 |
「ブレークスルー感染」8月以降192人 全感染者の8.8%(朝日新聞 2021/9/22) 新型コロナウイルスのワクチンを2回接種し、2週間以上過ぎた後に感染する「ブレークスルー感染」が、山口県内で8月1日~9月16日に192人確認された。この期間に感染した2172人の8・8%にあたるが、重症になった人はいなかった。 |
まとめ↓
日本全国で、ブレイクスルー感染の発生が報道され、同感染率は最大で58%にも達した。
ちなみに、首相官邸が公表するブレイクスルー感染率は以下となっていて、
12月13日現在の首相官邸のHPで公開されている接種実績データでは2回接種完了者は約9805万人なので、ブレークスルー感染率は0.02%だ。(現代ビジネス 2021/12/19)
上記の報道内容とはかなり、解離があります。
重症化していないから、感染してもいい、という話なのか?
この手の報道の締めくくりで、よくあるのは、
ブレイクスルー感染が発生したが、ほとんどが軽症で済み、重症化した人はほとんどいなかった(のでよかったし、だから、ワクチン接種をしておくべき)
と、なっています。たとえばこれ↓
新型コロナウイルスのワクチンを2回接種した人でも感染するいわゆる「ブレイクスルー感染」。65歳以上の新規陽性者では半数以上、58.7%に上ることがわかりました。都の専門家は、接種後も感染する可能性があることを認識してほしいとする一方、重症化の防止などに有効だとして積極的に3回目の接種を検討するよう呼びかけています。(NHK 2021/12/10)
ですが、そもそも、ブレイクスルー感染といっているくらいなので、ワクチン接種をすれば感染しないはずなのに、実際、フタを開けてみたら、感染どころか、発症防止にもなっていなかったという話になっていて、当初の話と全然違うじゃん!という状況になっています。また、クラスターにまでなっていて、感染拡大を引き起こしています。
ワクチン接種をする理由 → 他にうつさないためではないのか?
埼玉県が行った新型コロナウイルスワクチン接種に関するアンケートの中で、次のような結果になっています。
「あなたは新型コロナウイルス感染症の感染についてどう感じていますか?」に対して、最も多かった回答は、「不安」「どちらかというと不安」で合わせて90%となっていて、自身が感染することに不安を感じていることがわかります。
さらに、ワクチン接種をする理由に対して、「ワクチンの効果が期待できるから」と「自分が感染して周りの人に感染させたくないから」が上位を占めています。
1位の「ワクチンの効果が期待できるから」の「ワクチンの効果」とは、たいていは、先の質問で不安に感じていることの内容の、当然、新型コロナウイルスに感染しないこと、感染予防効果のことを指していると容易に予想されます。
そして、2位の「自分が感染して周りの人に感染させたくないから」は当然のことと理解できます。つまり、なぜ、ワクチン接種をするか?、は、
ご自身が「重症化しないため」など、ではなく、ご自身が感染せずに済んで、周りに人に感染させないようにしたい、迷惑をかけたくない
ということのはずです。重症化しなくてよかったというような話は、ラッキーだったというような話でしかないはずです。
最後に
これらのブレイクスルー感染に関する報道の多さを見てみると、ワクチン接種による感染予防効果は、ほとんど期待できなさそうです。これは、直近の、さらなる追加接種を急いで、オミクロン株の感染拡大防止を行なおうとする流れがあるが、全く期待できないということが予見できると思います。