はじめに
政府は、新型コロナ対策としてワクチン接種を未だにあてにしているようで、新規感染者数がピークアウトしたこの期に及んでも、3回目のワクチンをなんとか国民に接種させようとしています。
そして、その裏付けを説明するものとして、厚労省のホームページに、3回目接種の効果を解説しています。→ Q.オミクロン株にも追加(3回目)接種の効果はありますか。(厚労省)
そこには、なんとなくワクチン接種による効果を期待させるような内容が書かれてはいます。しかし、よく読んでみると、オミクロン株に対する3回目接種の効果は、デルタ株の時よりも効果が低くなっているという、結局は、ワクチン接種があまり期待できないという内容が、なんとかして前向きで!という、書き方で記載されています。厚労省は、ワクチン接種の効果が怪しくなってきている中の苦しい状況で一応、正直にデータを基に説明しているところは好感が持てます。
ほとんどの人はこのサイトを訪れないし、中身をよく読んだり、添付資料まで確認することはないと思うのですが、本記事では、ブログ主が、そこに書かれている内容を確認し、実際のところ、厚労省がいうところの、3回目接種がオミクロン株に効果がありそうなのかについて、解説を試みます。
結論
以下の結論となります。厚労省によれば、オミクロン株に対する、追加接種の効果について、以下の説明となっていました。
- 追加接種により、予防効果は回復することはするが、十分な回復が得られるのは、入院予防効果だけで、発症予防効果は約65から75%程度までしか回復しない上に、ファイザーでの追加接種の場合、約2ヵ月で、その効果は約50%にまで低下してしまう。また、感染予防効果と重症化・死亡予防効果については都合が悪いのか説明がなかった。
追加接種の効果(厚労省)の記述について整理する
厚労省が公表している以下のサイトに記載の、追加接種による予防効果の回復に関する記述を読み込み、実際にはどれくらい予防効果があると記載されているのか、その内容を整理しました。↓
追加接種による予防効果への影響
感染予防効果
今や、ブレイクスルー感染が、日常茶飯事となっていて、ワクチン接種により、新型コロナウイルスの感染予防効果があることは、誰もが知っています。対象のサイトの文章と、添付資料のうち「オミクロン株に対する新型コロナワクチンの有効性(第30回 厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会資料より抜粋)」にも、「感染予防」「感染防止」という言葉は一切出てきませんでした。つまり、厚労省は、ワクチン接種で感染予防ができるなどとは言えなくなっているようです。
これだけだとつまらないので、添付資料の一つについて、ワクチン接種についての感染予防効果についての記載を確認してみました。英国保健安全保障庁(UKHSA:UK Health Security Agency)は発表している資料です。→ COVID-19 vaccine surveillance report Week 5 UK Health Security Agency 2022/2/3
Google翻訳を用いて和訳したものです。
感染に対する有効性
ワクチン接種後にCOVID-19の症状を発症することはないかもしれませんが、それでもウイルスに感染し、他の人に感染する可能性があります。したがって、(中略) オミクロン変異体による感染に対するワクチン有効性の推定値はまだ利用できません。
また、同内容の根拠と思われる表を以下に示しました。2回目接種と3回目接種で感染予防効果がどれくらいあるかを示したものです。表を見てわかるように、2回目接種でも3回目接種でも"Insufficient data"となっていて、感染予防効果について根拠を示せていないことがわかります。
感染予防効果のまとめ
感染予防効果についてのまとめは以下のようになります。
- 厚労省発表の追加接種による予防効果に関する文章内には、感染予防効果に関する記述はなく、同効果についてはノーコメント。
- 同サイトの引用文献(英国保健安全保障庁)にはよれば、3回目接種での感染予防効果は、データ不十分で、よくわかっていないという結果だった。(2回目接種の感染予防効果もよくわかっていない)
発症予防効果
追加接種による発症予防効果の復活・回復の様子について、対象の厚労省ページの引用文献(第30回 厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会資料)の内容をまとめています。ちなみに同資料は、海外文献からデータを引用しているものです。
本接種がファイザーワクチンの場合
下図は、本接種(1,2回目接種)で使用したワクチンがファイザーの場合、追加接種でファイザー社のものあるいは、モデルナ社のものを使った場合、発症予防効果の復活の様子を表したものです。対象の変異株が、デルタ株およびオミクロン株の場合についてグラフにしてあります。
このグラフは次のような内容になっています。
- 本接種がファイザーの場合、オミクロン株に対して、その発症予防効果は、接種からの時間経過とともに低下するが、ファイザーまたはモデルナの追加接種を行なうと同予防効果は67-74%まで回復する。
- 追加接種後、時間経過とともにオミクロン株に対する同効果は逓減していき、例えば、10-14週経過すると45-60%に低下する。同低下の程度は、モデルナよりもファイザーの方が大きい。
- 追加接種後、同予防効果は経時変化する。追加接種がモデルナの場合は、同予防効果は65%ぐらいを維持する傾向に見えるが、ファイザーの場合は、15週以降で40%以下にまで低下する。
- 同予防効果の回復の程度は、対象の変異株によって異なる。対象がデルタ株の場合は、追加接種により本接種直後ぐらいのレベルに同予防効果が回復していたのに対し、オミクロン株の場合は、最大で75%にまでしか戻らず、しかも追加接種後の逓減の大きい。
本接種がモデルナの場合
下図は、本接種(1,2回目接種)で使用したワクチンがモデルナの場合、追加接種でファイザー社のものあるいは、モデルナ社のものを使った場合、発症予防効果の復活の様子を表したものです。対象の変異株が、デルタ株およびオミクロン株の場合についてグラフにしてあります。
このグラフは次のような内容になっています。
- 本接種がモデルナの場合、オミクロン株に対して、その発症予防効果は、前記のファイザーの場合とほとんど同じ傾向であった。
発症予防効果のまとめ
まとめは以下のようになります。
- 追加接種を行なうことにより、オミクロン株に対して発症予防効果が復活するものの、追加接種直後で、約65から75%程度にしか復活しない。(対デルタ株の場合は、90%以上に復活していた)
- 発症予防効果の復活の程度は、本接種と追加接種の組合せがファイザー、モデルナのどちらでもおおよそ同じような傾向であった。
- 追加接種後、時間経過とともに発症予防効果は低減し、ファイザーで追加接種を行った場合、5-9週(~2ヵ月)で、発症予防効果は約50%に、10から14週後(~4.5か月後)には、約46%にまで低下する。
- 発症予防効果の逓減傾向は、モデルナよりもファイザーの方が大きい傾向がある。
つまり、追加接種するとオミクロン株に対して発症予防効果が復活するけれども、復活のレベルはデルタ株の時と比べて低い上に、接種後2ヵ月もすると、同効果は50~,60%程度になってしまうという結果でした。
入院予防効果
追加接種による入院予防効果の復活・回復の様子について、同様に内容をまとめています。下図は、(例1)Thompson MGらによるものと、(例2)英国健康安全保障庁によるものです。
また、下図は、(例3)英国健康安全保障庁によるもので、また、別のものです。
入院予防効果のまとめ
まとめは以下のようになります。
- 追加接種により、オミクロン株に対して、入院予防効果は、本接種直後レベルか、あるいはそれ以上の80から90%程度の高レベルまで回復する。
- 追加接種後の同予防効果の低減傾向は、比較的少ない傾向がありそう。
重症化、死亡予防効果
追加接種による、重症化、死亡予防効果については記載がありませんでした。
まとめ
上記の内容を表にまとめてみました。
予防効果 | 記載の内容 |
---|---|
1.感染予防効果 | 厚労省はノーコメント。記載がなかった。 |
2.発症予防効果 | 追加接種を行なうことにより、オミクロン株に対して発症予防効果が復活するものの、追加接種直後で、約65から75%程度までしか復活しない。また、追加接種後、時間経過とともに回復した発症予防効果は低減し、最大で約46%にまで低下する(ファイザー、~4.5か月後の場合)。 |
3.入院予防効果 | 追加接種により、オミクロン株に対して、入院予防効果は、本接種直後レベルか、あるいはそれ以上の80から90%程度の高レベルまで回復する。 |
4.重症化・死亡効果 | 厚労省はノーコメント。記載がなかった。 |
最後に
結局、厚労省の該当のページに書かれていたことは、追加接種を行なうことでオミクロン株に対して、入院予防効果は高いレベルで回復するものの、その他の予防効果への効果は、大したことがないか、コメントができない、というものでした。