はじめに
この程、新型コロナウイルスワクチン接種を証明するための、電子版の接種証明アプリが稼働開始しました。
ワクチン接種をしていても、新型コロナに感染してしまう、ブレークスルー感染が起こることが明らかになり、ワクチンによる感染防御が完全ではないことが明らかになってきた状況で、果たして、ワクチンパスポートが意味があるのだろうか?、と私は考えています。
本記事では、ワクチンの接種証明・パスポートが意味があるものかについて考えてみました。
結論
接種証明書・ワクチンパスポートの本格的な運用には、ワクチン接種による感染予防効果のエビデンスが必要であるが、厚労省は、(発症予防効果は明言している一方で)感染予防効果について、あまりはっきりとは明確にしていない。ブレークスルー感染の発生や、感染予防効果の接種後の短期間での低下も明らかになってきていて、接種証明書・ワクチンパスポートの今後の運用には多くの課題がある。
接種証明アプリ稼働開始へ
新型コロナウイルスワクチンの紙での証明書自体は、すでにありましたが、この度、スマホアプリで使えるような電子版の接種証明が稼働開始しました。
i-phoneでも同様なアプリが配布されています。
以下が表示例です。氏名、接種日、接種したワクチンの種類(ワクチンメーカー)、接種回数、等が表示されます。
注意点ですが、「マイナンバーカードがない人」、「マイナンバーカードに旧姓併記がある方」等は証明書を作成できないそうです。また、マイナンバーカードの普及率は、意外にも低く、現状、4割しかないということらしいので、当面、このアプリが一般的になることはなさそうです。
また、肝心の証明書の有効期限の表示もありませんので、証明書というよりは、「まずは、とりあえず、作ってみました」というようなレベルのものでしょう。
後述しますが、接種証明(ワクチンパスポート)は、「私は、ワクチン接種してますので、他への感染させません」という感染させないという証明のはずなのですが、ワクチン接種から半年も経つと、感染予防効果は半減するようなことが明らかになっているので、あまりにもすぐに有効期限が切れてしまう上に、証明書以前にワクチンの有効期限をどのように定めるかについて、全く決まっていないのですから、有効期限など、表示できるはずがありません。
接種証明書とは?目的?
そもそも、ワクチン接種証明・パスポートの目的は何なのでしょうか? 厚労省は、接種証明書に関する説明を以下で行なっています。↓
新型コロナウイルス感染症 予防接種証明書(接種証明書)について
このサイトの中で、以下のように述べています。
新型コロナウイルス感染症予防接種証明書(接種証明書)は、予防接種法に基づいて各市町村で実施された新型コロナワクチン接種の事実を公的に証明するものとして、被接種者からの申請に基づき交付するものです。
上記では、「新型コロナワクチン接種の事実を公的に証明」するとあります。これでは、少しわかりづらいので、もう少し知らべてみると、市町村のホームページには、おそらく、外務省からの公式文書のテンプレートをそのまま貼り付けたと思われる以下の内容が書かれています。
新型コロナワクチン接種証明書(ワクチンパスポート)は、海外の渡航先への入国時に、相手国等が防疫措置の緩和等を判断する上で活用されるよう、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種の事実を公的に証明するものとして、接種者からの申請に基づき交付するものです。渡航以外の目的での公的な証明書としての効力はありません。
当面の間は、書面による交付となります。
抜き出してみると以下のようになっています。
- 正式名称は、新型コロナウイルス感染症予防接種証明書
- 新型コロナワクチン接種の事実を公的に証明するもの。
- 海外の渡航先への入国時に、相手国等が防疫措置の緩和等を判断する上で活用される。
- 渡航以外の目的での公的な証明書としての効力はない。
ずばり、「当人が新型コロナに感染していないこと、他に感染させる恐れがないことを証明する」などとは、さすがに書かれていませんが、文面から、当人がワクチン接種を済ませていることを前提にして、他に感染させにくい状態にあることを表したいようです。もう少し砕いて言うと、「他に感染させる可能性が未接種者よりは少ない」ことを証明するようなものです。
ワクチンパスポートが意味をなさない理由
ワクチンパスポートは、ワクチンが一定の感染予防効果を有していることを前提に発行されるものですが、現状では、そこまで踏み込んだものにはなっていません。
(理由1)ワクチンの感染予防効果が完璧ではない → 現にブレークスルー感染
ワクチンに対する期待することは、まず第一に「感染予防効果」だと私は思うのですが、厚労省のホームページを見てみるとわかるのですが、感染予防よりは、「ワクチン接種は発症予防効果のために行なう」という前提の内容がほとんどです。
以下の厚労省のページには、「感染予防効果については、効果が示されていない」旨の内容が書かれています。(「感染予防効果が示されていない」と「感染予防効果がある」の両方の異なる記載が書かれているが、よく読むと、感染予防効果のエビデンスが示されていない、という内容になっている)
現に、ブレークスルー感染が明らかになっていて、ワクチン接種をしていても、感染する人は感染してしまうわけです。
(理由2)接種から時間経過で、感染予防効果が低下
ワクチン接種後、しばらくは感染予防効果がありますが、半年もするとその効果が大きく低下し、感染予防効果が期待できなくなることがわかっています。下図は、既に記事にしている「ワクチンはいつまで効果が継続するのか?→感染予防効果は約5ヵ月で半減!新型コロナウイルス」からの抜粋です。
上図からわかるように、ワクチン接種後、しばらくは、感染予防効果があるかもしれませんが、わずか半年で効果が半減するということになると、接種証明書にもその内容を考慮しないといけないわけですが、現状、接種証明書の有効期限の記載自体がありませんので、意味のないものになっているのがわかります。
(理由3)有効期限をどのように設定するのかが決まっていない
ワクチンパスポートは、有効期限の記載がなくて不完全だけど、まずは運用を開始しました、ということのようですが、有効期限・期間を設定していない証明書はあまり意味がありません。
ワクチンパスポートは「接種済であることだけ」を証明するものですが、その前提は暗に「当人が他に感染させない、はず」とするものです。
有効期限を設定するには、その感染予防効果がどれくらい期待できるかを、規定しなくてはいけません。前述のように、感染予防効果については、半年で効果が半減していくということであれば、じゃあ、2回目接種から何日目までが、一定の感染予防効果があるのかを、エビデンスを基に決定する必要があります。そして、あらゆるワクチン接種済者に適用できるように、マージン等を考慮し、有効期限を設定するということになります。
厚労省のデータを見ていますと、ワクチンの感染予防効果が果たしてどこまであるのかが、はっきりとしていないような状況ですから、ワクチンパスポートの有効期限を設定することは当分不可能でしょう。
最後に → 当面、不完全なワクチンパスポートが運用される
接種証明書(ワクチンパスポート)は、前記のように「渡航以外の目的での公的な証明書としての効力はない」とあるのですが、私が恐れている状況は、これがないと「○○できない、お断り」というケースが、あちこちで出てくることです。例えば、コンサート、集会、レストラン、新幹線の利用、ホテル、就業への従事(バイトも)、職場への立ち入り、といったことです。病院の看護師ではこれに近いことがすでに行われているのではないかと推測しています。
これは、政府がワクチンパスポートを発行を事実化することで、あまりよくわかっていない事業主等が、ワクチンパスポートを使って制限、運用してしまうことですが、なんとも面倒くさい事態になってしまいます。新型コロナウイルスの早い収束を期待したいです。