はじめに
2022年1月9日、埼玉県で3回目のワクチン接種を済ませた方が、新型コロナウイルスの陽性が判明したとの報道がありました。報道ではほとんど詳細は明らかにされていませんでしたが、この時期(2022年1月初旬)に3回目接種を済ませているということは、2021年12月1日からの追加接種の医療従事者優先分に該当する方と推測されます。
こうして報道されるということは、
「追加接種したのに、感染してしまった人がいる!」
ということを、報道メディアが、殊更、強調したい意図があると予想されますが、このサイトをチェックしてくれてる人なら、そんな驚くようなことでもありません。
政府もワクチン接種は、最近では、当初から態度を変えて、ワクチン接種は「重症化予防効果」がメインであることを強調して、「感染予防効果」はオマケ的位置づけでなので、ほとんど触れなくなりました。
しかし、どう考えて、そもそも感染しないことが最も大事なことだと一般人の私は思うわけですが、これだけブレイクスルー感染者の頻発が報道されるようになってくると、ワクチン接種では感染が防げないことがバレバレになってきて、ワクチン接種の意義が揺らぎつつあるのを感じます。
本記事では、「3回目接種者が感染したことは、驚くべきでもないということ」について、これまでの厚労省公開情報や、3回目接種が進んでいるイスラエルのケースを例に、説明を試みます。
結論
2022年1月初旬に、日本で3回目接種者が新型コロナウイルスに感染したことを報道されている。筆者は、以下の理由で3回目接種でも感染予防に期待できないと考えている。
(1)各社ワクチンメーカーの説明書自体に、そもそも感染予防効果を謳っていないこと。アストラゼネカに至っては、「感染を完全に予防できる訳ではありません」と明記している。
(2)現行ワクチンが従来株を念頭に開発されているが、従来株から何度も変異を繰り返した変異株に対して、いまだにその現行ワクチンを使用していて、その効果が怪しいこと。
(3)3回目接種の進んだイスラエルにおいて、ワクチン接種が感染予防に効果がなかったこと。
報道の内容→3回目接種者が感染
前述の3回目接種後に感染者が発生したことに関して、以下のような報道がありました。
3回目接種後の20代男性が感染… クラスター(読売新聞 2022/1/9)
埼玉県は7日に判明した陽性者のうち、20歳代の男性1人がワクチンを3回接種していたと公表した。県内で3回接種後に感染が確認されたのは初めて。
<新型コロナ>埼玉県で新たに227人が感染 3回目接種後の感染者も(東京新聞 2021/1/11)
埼玉県内では11日、新型コロナウイルスの新たな感染者227人が発表された。新規感染者数が200人を超えるのは5日連続。県によると、50代女性1人は今月上旬に3回目のワクチン接種を受けていた。3回接種後の感染確認は県内で2人目。
海外での3回目接種者が感染したケースは、見かけたことがありますが、上記の国内での例は、これが初めてではないかと思われます。記事を見る限りでは、該当者が感染した新型コロナウイルスは、デルタ株なのか、オミクロン株なのかは不明です。
3回目接種者が感染する3つの理由
ワクチン接種の感染予防効果はそもそも不明
ワクチン接種の感染予防効果は、そもそも、公式に明らかにされていません。既報(ワクチン接種では、感染予防できない!政府、マスコミのミスリード。新型コロナウイルス)でも書いていますが、厚労省が公表しているファイザー、モデルナ、アストラゼネカの説明書には、
「感染予防効果は明らかになっていません」
「感染を完全に予防できる訳ではありません」
と、感染予防効果を否定はしてませんが、効能を謳うほどのものはない旨が明記してあります。
ワクチンメーカー | 説明書内での感染予防効果についての記述 |
---|---|
ファイザー | ・ワクチンの効果と投与方法 → 新型コロナウイルス感染症の発症を予防します。現時点では感染予防効果は明らかになっていません。ワクチン接種にかかわらず、適切な感染防止策を行う必要があります。(ファイザー 新型コロナワクチン予防接種についての説明書) |
モデルナ | ・ワクチンの効果と投与方法 → 新型コロナウイルス感染症の発症を予防します。現時点では感染予防効果は明らかになっていません。ワクチン接種にかかわらず、適切な感染防止策を行う必要があります。(モデルナ 新型コロナワクチン予防接種についての説明書) |
アストラゼネカ | ・新型コロナウイルス感染症の発症を予防します。感染を完全に予防できる訳ではありません。ワクチン接種にかかわらず、適切な感染防止策を行う必要があります。(アストラゼネカ 新型コロナワクチン予防接種についての説明書) |
厚労省の説明書にこのように書いてある以上、これらのワクチンに感染予防効果などあろうはずがありません。3回目接種者が感染するのも納得のことです。
ワクチンがもうオミクロン株に適応していない。
ウイルスは、2週間ごとに少しづつ変異していくと言われていますが、今回のオミクロン株は変異の程度が大きく、前回のデルタ株までの変異株とはかなり異なるそうです。オミクロン株の説明は、国立感染症研究所の見解によれば、次の通り。
オミクロン株は基準株と比較し、スパイクタンパク質に30か所程度のアミノ酸置換を有し、3か所の小欠損と1か所の挿入部位を持つ特徴がある。このうち15か所程度の変異は受容体結合部位(Receptor binding protein (RBD); residues 319-541)に存在する(ECDC. Threat Assessment Brief)。
上記の内容は専門的で、かつ、説明が足りなさすぎで、あまりにもよくわからない内容ですが、大阪市立大学医学部 名誉教授 井上正康氏によれば、旧型コロナウイルス(いわゆる風邪)と新型コロナウイルスの中間のような構造をしているそうです。
インフルエンザワクチンでさえ、毎年、流行株に合わせてワクチンを製造し接種を行なっているのに、現在のワクチンは2年ほど前に、従来株を念頭に開発され、未だにそのまま使われているものであり、大きく変異を遂げたオミクロン株に対して効果が期待できないのは容易に予想できます。
イスラエルでは3回目接種の効果はあったのか? → 効果なし
3回目接種で、新型コロナウイルスの感染防止に効果があるのかについて、ワクチン接種先進国のイスラエルを例にとって見てみましょう。
イスラエルは、早くからワクチン接種を開始していて、既に3回目のワクチン接種率はおよそ50%にまで達していて、さらに4回目接種まで近々行われるそうです。下図にイスラエルの新型コロナウイルス感染者数とワクチン接種率の関係を示しました。
世界的に感染のピークがあり、上のグラフでもその様子がわかりますが、そのうち、(A)第4波と(B)第5波と言われるピークの時期にワクチン接種の効果があったのかを見てみます。ワクチン接種に感染予防効果があれば、同接種率と感染者数に何らかの相関関係が見られるはずです。
第4波(A)でのワクチンの効果(2021年1月頃)(2回目接種時)
第4波は、2021年1月頃の感染のピークのことを指しています。上のグラフを見てみると、感染のピークに達した頃にワクチン接種が開始できた形になっています。
同接種率50%に達したのは同年3月中旬ぐらいとなっています。接種率と感染者数の関係をみてみますと、一見、ワクチン接種が感染者数減少に効果があるように見えますが、そうはなっていません。普通に考えて、ワクチン接種率が効果があらわ始めるであろう半数の5割に達してから、感染者数が減少し始めたというわけではなく、同接種率が15から20%になったあたりから感染者数が減少し始めるという関係になっています。
ようやくイスラエル国民の半分がワクチン接種を済ませた頃には、既にピーク時の5分の1とかに感染者数が大きく減少していますので、感染者数の減少はワクチン接種の効果ではなく、別の要因によるものであると考えるのが自然です。
第5波(B)でのワクチンの効果(2021年9月頃)(3回目接種時)
第5波は、2021年9月頃の感染のピークのことです。この場合は、2回目接種率は既に、約60%にも達しています。3回目接種は2021年7月末頃の感染者数のピークの立ち上がりの時期に開始していますが、感染のピーク時で接種率が約30%でした。結局、接種率が40%まで進んだ頃には、感染のピークは終わっていて、ピーク時の5分の1の感染者数となっていました。
この第5波の場合、次のような状態になっていて、ワクチン接種が感染予防に対して疑問符がつく状態になっていることがわかります。
- (2回目接種の効果)2回目接種済の人の割合が60%に達しているのに、同接種率と感染者数との相関がなく、2回目接種が全く感染予防に効果を表していない。ちなみに、第5波の時期は、2回目接種完了から半年ぐらいでありそれほど時間が経過しているわけではない。
- (3回目接種の効果)接種率30%に達したところから感染者数が下がる形になっているが、そのような低い接種率で国全体の感染者数を低減させているとは考えにくく、3回目接種によって、感染者数が下がったと原因とは思われない。
3回目接種はオミクロン株に効果があるのか?
報道では、3回目接種でオミクロン株に効果があるらしいが…
オミクロン株の感染拡大に合わせてか、「既存のワクチンを3回接種しておけば予防がある」旨の報道が2022年初前後にありました。次のようなものです。
オミクロン株の分析結果「感染防ぐには3回接種が必須」 NY大学研究者が公表(テレ朝news 2022/1/8)
ニューヨーク大学・多田卓哉博士研究員:「オミクロン株について言いますと、(ファイザー・モデルナの2回接種後、2、3カ月の抗体では)重症化は防げると思うが、しかし、感染を防ぐには、この値では不十分と考えている。もし、感染を防ぎたい人には3回のワクチンが必須になります」
ファイザー製ワクチン3回目接種、オミクロン株に高い効果=研究(ロイター 2021/12/13)
イスラエルの研究チームは11日、米ファイザーと独ビオンテックの新型コロナウイルスワクチンが3回目接種でオミクロン変異株に高い効果を発揮するとの研究結果を発表した。
「3回目接種がオミクロン株の感染拡大や重症化リスク減らす」長崎大学大学院・森内浩幸教授(東日本放送 2022/1/5)
森内教授「オミクロン株による感染拡大や重症化のリスクを減らすためには、3回目のワクチン接種をできるだけ早く行い、抗体の数を増やすことが重要だ」「抗体の量全体を底上げすることができれば、たとえその40分の1だとしても十分に感染を防いでくれたり、感染を防ぐことができなくても、重症化を防いでくれるような効果っていうのは残っていると思います。」
米モデルナ「3回目接種、オミクロン株に効果」発表 半量投与で(毎日新聞 2021/12/16)
米バイオテクノロジー企業モデルナは、同社製の新型コロナウイルスワクチンの3回目接種で、新変異株「オミクロン株」に感染するリスクを大幅に下げられる可能性があるとの査読前論文を発表した。これまでの1回当たりの半量を投与することで効果があったとしている。
オミクロン株の存在は、2021年の11月に発見されたばかりであり、どの公的、民間の研究施設も、実験レベルの試験はできていても、時間的に到底、大規模な実証試験がまだできていないはずです。上記の報道は、実験レベルの話のようで、いずれも実証試験の結果ではないので、実際のところどうなるのかが不明です。3つ目の長崎大学大学院・森内浩幸教授の報道に至っては、データを示しておらず、ただの期待を述べているだけです。
でも、イスラエルでは、オミクロン株の感染に効果なさそう(前述グラフ参照)
先に示したイスラエルの感染者数とワクチン接種率のグラフのうち、2021年12月後半からあとに「第6波」のピークの一部が見えています。これはオミクロン株の流行を示しています。
前述のように、イスラエルでは、12月後半の段階でのワクチン接種率は、以下のような値に達しています。しかも、接種開始したばかりというようなことではなくある程度の期間が経過しています。
<2021年12月後半でのイスラエルでのワクチン接種率>
・2回目接種率 : 約63%
・3回目接種率 : 約45%
しかしながら、このような全く高い接種率とは無関係に、「第6波」のピークの一部が見えていて、感染者数が一気に増加している様子がわかります。
つまり、「3回目接種でオミクロン株に効果がある」との報道とは違って、「3回目接種してもオミクロン株に効果は期待できない」という様子が伺えます。
最後に
日本でもこれから本格的に3回目接種が開始されますが、イスラエルの結果を見てわかるように、感染予防には効果が出ない可能性がありそうです。過去の結果から想定すると、2022年の5,6月ぐらいの3回目接種があまり進まないうちに、第6波が収束するということになると予想しています。
上記のイスラエルの接種率は60%強とあまり高くなかったのですが、日本人は真面目で、よく言われている「同調圧力」に弱そうなので、3回目接種率もそこそこ高くなるのかもしれません。オミクロン株では症状が軽いそうなので、むしろ心配なのはワクチン接種による副反応じゃないかと思っています。